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不正咬合の治療方法:不正咬合の種類:上顎前突
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不正咬合の治療方法
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包括(全顎)的治療vs限局(部分)的治療
上顎前突 (じょうがくぜんとつ)
いわゆる”出っ歯”と言われている歯並びです。
上顎の前歯が前方に突き出しているために、ぶつかって前歯が折れたり、
唇を切ったりすることがあります。
上顎の前歯や上顎全体が前方に出ている場合と、下顎や下顎からオトガイ
全体が小さくて後退あるいは時計方向へ回転している場合があります。
さらに、下顎頭(関節頭)が変形・吸収しているために、
このような下顎の後退あるいは時計方向への回転が生じている場合も
あります。
3DCTとパノラマX線写真
右側関節突起は短かく、関節頭の骨変形が認められる
永久歯が第二大臼歯まですべて生え揃ってからは、
上顎の前から四番目の歯(第一小臼歯)を抜いて治療することが多いの
ですが、上顎の前から四番目の歯(第一小臼歯)と下顎の前から五番目
(第二小臼歯)あるいは、四番目の歯(第一小臼歯)を抜いて治療する
こともあります。(定型抜歯)
下顎叢生と過蓋咬合を伴う上顎前突
下顎叢生と過蓋咬合を伴う上顎前突に対して上下顎を抜歯して
咬合と口もと・側貌を改善した症例です
初診時
治療終了時
初診時(左)と治療終了時(右)の側貌
抜歯治療によって、治療後には口唇の突出感が改善されて、
良好な口もとが獲得されています。
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像をクリックして下さい。
さらに、抜く部位が大臼歯だったり、前歯であることもあります。
(非定型抜歯)
上顎大臼歯を抜歯して矯正治療を行った症例の知験と考察
鶴田仁史
第42回中・四国矯正歯科学会大会 1999(平成11年) 7月 岡山
また、抜歯せずに治療する場合もあります。(非抜歯治療)
上下顎叢生を伴う上顎前突(非抜歯治療)
下顎前歯が舌側に倒れ込んだ上顎前突でしたので、
上下顎とも非抜歯で排列した症例です
初診時
治療終了時
初診時(左)と治療終了時(右)の側貌
非抜歯治療ですが、治療後に口唇の突出感が改善されて、
良好な口もとが獲得されています。
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像をクリックして下さい。
下顎の成長がまだ残されている年齢では、下顎の成長を促すことを期待
した治療を行うことがあり、十分な下顎の前方への成長が得られた場合
には、抜歯の必要がなくなることもあるのです。
上顎前歯部空隙と過蓋咬合を伴う上顎前突(第一期治療+第二期治療)
上顎前歯部空隙と過蓋咬合を伴う上顎前突に対して、
上下顎セクショナルアーチと咬合挙上板を用いた第一期治療で概ね改善
して、第二期治療で仕上げの排列をして非抜歯で治療した症例です
初診時
第一期治療終了時
(上下顎セクショナルアーチ開始8か月後、咬合挙上板使用開始時)
第二期治療終了時
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像↑をクリックして下さい。
なお、
矯正歯科治療における偶発症としては、歯肉退縮、歯根吸収、
齲蝕のリスクなどが挙げられます。→
一般的なリスク・副作用
ところで、従来、広く行われてきたヘッドギアー(Headgear)による
上顎大臼歯の遠心移動は、長時間の装着が必要であり、患者さんの
協力にのみ頼った治療法であることから敬遠されることが多いのが
現状です。
昨今では、歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療で、
上顎の歯を後方へ移動させることも可能なケースもあります。
しかし、下顎自体が後退している場合には、上顎の歯を抜いて、
咬合だけを作り上げても、すなわち骨格の不正をカムフラージュ
するだけでは、好ましい側貌を得ることは難しいことが多いのです。
咬合だけでなく顔貌の改善も視野に入れた治療ゴールを目指した
治療法の選択(
顎矯正手術:下顎骨前方移動術や上顎前方
分節骨切り術など)も検討すべきでしょう。
また、正面から観た時の上顎の歯の先端や咬み合わせの面を連ねた面
(咬合平面)が傾斜していて、上下の唇を閉じた時に左右の口角が
右上がりや左上がりになっていて顔面非対称を呈している場合も
あります。これを改善するためには、上下顎移動術(
顎矯正手術)が
必要となります。
なお、
顎変形症の治療に伴う主たる偶発症・合併症としては、
出血、知覚異常、後戻り、顎関節症、Progressive Condylar Resorption、
心理的不適応、閉塞型睡眠呼吸障害などが挙げられています。
そのため、治療開始前に起こりうる偶発症・合併症に関する十分な説明を
行って、インフォームドコンセントを得た上で治療を開始すべきであると
されています。
…日本口腔外科学会による顎変形症診療ガイドライン(2008年)
顎矯正手術を併用した治療の詳細については、
顎変形症 ならびに
顎変形症に関する研究業績 をご覧下さい
さらに、オトガイが十分に発達していない(=前方への突出度が小さい)
場合には、
オトガイ形成術やシリコンなどを用いたAugumentationも
診断の際に併せて考慮すべきかもしれません。
なお、
オトガイ形成術後には、下記のごとく様々な
合併症が生じることが
報告されています。
…創の離開、感染、血腫、知覚神経麻痺、歯の偏位、歯根の損傷、
歯肉の牽引による歯根の露出、過剰な軟部組織やmentalis muscle縫着の
失敗によるsoft-tissue chin ptosis、非対称やstep-type deformitiesなど
の輪郭不整などが挙げられます。
顎変形症患者に対して施行したオトガイ形成術後の輪郭不整について
鶴田仁史, 宮本純平, 宮本義洋, 宮本博子
日本美容外科学会会報 第39巻, 第 3号,
8-20. 2017(平成29年)
オトガイ突出度の大小
左から、オトガイの突出度がやや大きい、標準的、著しく小さい
オトガイ形成術(水平骨切り術によるオトガイの前方移動)
左は術中写真(プレートを用いて固定)
右は治療後の側方頭部X線規格写真
種々の不正咬合の治療例はこちらからもご覧いただけます
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