金属アレルギーと矯正治療
注:当院は矯正治療のみを専門に行う医療機関です。
アレルギーに対する治療を行うものではありません。
矯正装置のほか、歯科治療では多くの金属材料が使われています。これらの金属成分がイオン化して溶け出してアレルギーを引き起こすことがあります。
症状としては、舌炎、口内炎、口唇炎、扁平苔癬、掌せき膿疱症、難治性の手指皮膚炎、全身の皮膚炎、皮膚掻痒症などがあります。
対策としては、
1.その金属の供給源の特定、
2.供給源の除去、
3.その金属を含むものを避ける ことです。
金属アレルギーの疑いがある患者さんは、
皮膚科を受診して金属パッチテストを受けていただき、ご自分が、どの金属元素にアレルギーを持っているのかを確認することが大切です。この結果をみて、今後の矯正治療で使用できる器具・材料を検討します。
下記の表は、皮膚科に金属パッチテストを依頼して得られた結果の一例です。
矯正治療に用いられる金属材料には、ブラケット、ワイヤー、バンドなどがありますが、ほとんどが金属アレルギーを発症させやすいニッケル、クロムを含んでいます。
当院では、金属アレルギーへの対策として、下記のようなことを行っています。
1.ブラケット:前歯部は硬質プラスチック、臼歯部(奥歯)はチタン製を用いる
2.ワイヤー:ニッケル、クロムを含まないベータチタン系(ベータチタニウム
ワイヤー)を用いる
ところで、矯正装置を装着していると、たえず口腔粘膜に接触していることになりますが、口腔粘膜や皮膚に炎症を生じることはきわめて稀だと云われています。
これまでにも、金属アレルギーの対策を行った患者さんの中で、金属パッチテストの結果、使用を避けたいものの、代用する製品が無いためにやむを得ず使用した場合もありましたが、特に、アレルギー症状が発現したことはありませんでした。
これは、金属成分がイオン化して溶け出しても、大量の唾液によって薄められているものと考えられています。
【 上下顎前歯部叢生を伴う上顎前突(T期+U期治療) の治療例 】
金属アレルギーを有する10歳の混合歯列期の上顎前突に対して、
5か月半の第一期治療によって上顎前突をほぼ改善し、
その後は永久歯の萌出と顎骨の成長を3年間観察を継続して、
14歳2か月から1年2か月間の抜歯による永久歯の矯正治療を行った
症例です
初診時
装置装着時(T期治療)ベータチタニウムワイヤーを使用
U期治療終了時
抜歯治療によって上顎前突を改善できました
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像をクリックして下さい。
【 上下顎前歯部叢生(非抜歯治療)の治療例 】
金属アレルギーを有する上下顎前歯部叢生に対して非抜歯治療を行った
症例です
初診時
装置装着時
治療後
金属アレルギーへの対策(ブラケットとワイヤー)を行って、
通常の矯正治療と ほぼ同等の治療ゴールを達成することが出来ました
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像をクリックして下さい。